2013年4月から新病院に導入された最新の医療機器を活用し、脳卒中や脳腫瘍、頭部外傷、脊椎疾患の診療を行っております。2017年7月には、移動式術中32列ヘリカルCTのAIROが日本初導入されただけでなく、従来から活用している手術ナビゲーションシステム、術前シミュレーション画像、術中神経モニタリング装置に加え、最新の脊椎外科用ナビゲーションシステムも使用可能となりました。
また、2017年7月に新設された手術室には、各種術中情報が天吊りの58インチ大型モニタへ統合できるシステムも構築され、より安全で正確な手術ができる環境が整備されました。
当院では脳血管内治療の指導医が治療を行います。
脳卒中センター 脳血管内治療科(院内組織) 部長
岡本 薫学
おかもと しげたか
■専門分野/脳血管内治療(脳血管障害)
■資 格/日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医・指導医、下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による指導医、日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医
■診療時間/毎週木曜
寝たきりを防ぐ
近年、寝たきりの患者さんが増えてきています。寝たきりの原因として、最も多いのが脳卒中による後遺症です。脳卒中とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血を含みます。いずれも発症すると程度は様々ですが、四肢の麻痺(手や足が動かなくなる)や感覚障害(手足のしびれや感覚がなくなる)、ろれつ障害、嚥下障害(ご飯が食べにくくなる)、失語症(言葉が理解できなくなる)などの後遺症が残る可能性が高いです。
くも膜下出血と脳動脈瘤
今回は、脳卒中の中でも死亡率が高く後遺症を残す可能性の高い、くも膜下出血について紹介します。くも膜下出血の原因は、ほとんどが脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)がやぶれることによるものです。
脳動脈瘤とは、脳の血管が風船のように膨らみこぶ(瘤)ができてしまう病気です。正常の血管構造と異なるため、血管の壁が薄くなり破裂してしまうのです。破裂する確率は、年間約1%といわれています。しかし、脳動脈瘤の大きさ・形・場所により破裂する危険性は異なることがわかっています。
くも膜下出血を予防する
脳梗塞や脳出血は発症する前に予防することは難しいのですが、くも膜下出血は脳動脈瘤を治療することで予防することができます。脳動脈瘤の治療には、開頭クリッピング術とカテーテル治療の2通りあります。近年、低侵襲(体への負担が少ない)治療が好まれ、カテーテル治療の治療件数は全国的に増えてきています。
しかしながら、従来の開頭手術を行う術者(手術を行う人)に比べ、カテーテル治療ができる術者は少ないのが現状です。愛媛県内に限らず四国全体でみても、患者さんの治療や若手の指導ができる術者(指導医)が在籍する病院は数施設しかありません。
開頭クリッピング術、カテーテル治療、いずれの治療法を選択しても脳梗塞や脳出血などの重篤な合併症もあるため、治療法や危険性について十分ご理解いただくことが必要です。
脳動脈瘤は頭部MRI検査を行うことで発見することができます。一般的に脳動脈瘤は20人に1人発見されると報告されています。脳動脈瘤を早期発見・早期治療することで、寝たきりを防ぐことができます。寝たきりにならず、健康寿命を延ばしましょう。
今まで地域では難しかった治療を、当院でできるようになりました。以下の症状がみられる方は、お気軽に当院サポートセンターまでご連絡ください。
妊娠や自動車の運転、学校や就職などでお困りの方もご相談ください。
3次元融合画像による術前シミュレーション
高機能脳神経外科ナビゲーションシステム
・Dual Source CT SOMATOM Definition Flash(シーメンス)
・3T MRI MAGNETOM Verio 3T(シーメンス) 32ch Head coil、fMRI可能
・DSA Artis zee BA Twin(シーメンス) フラットパネル・バイプレーン
・手術用顕微鏡 OPMI PENTERO 900
・術中血管観察モジュール(INTRARED 800)
・術中モニタリング装置 エンデバーCR(ネイタス社)
・神経内視鏡システム VISERA ELITEⅡ、軟性鏡、硬性鏡、エンドアーム(オリンパス)
・ナビゲーションシステム CURVE (ブレインラボ)、KICK(ブレインラボ)
Cranial Navigation Application
Microscope Integration
Elements Cranial Planning
Intraoperative Ultrasound
Fibertracking and Functional Software
Spine Navigation Application
・移動式術中32列ヘリカルCT AIRO(ブレインラボ) ※日本初導入
・VarioGuide(BRAINLAB)
・超音波吸引装置(エムアンドエム SONOPET UST-2001)
・ハイスピードドリル Primado2(ナカニシ)
・ICPモニタリングシステム(コッドマン)
・三次元画像解析ワークステーション SYNAPSE VINCENT(富士フィルム)
開頭シミュレータ/テンソル解析
・3Dプリンター(OPT UP Plus2) *実寸大手術シミュレーションモデル作成可能
・手術映像システム、IPネットワークNEXXIS(バルコ)
・経頭蓋超音波診断装置 ソナラ(ケアフュージョン社)
・INVOSモニター INVOS™無侵襲混合血酸素飽和度監視システム
・遠隔診療支援 Quentry(ブレインラボ)
・HAL(Hybrid Assistive Limb)HAL自立支援用単関節、HAL医療用下肢タイプ
(サイバーダイン)※世界初のサイボーグ型ロボット
・N-VISION(メドトロニック )
当院ではカテーテルを用いた血管内治療だけでなく、神経内視鏡を使用した手術を行い、患者さまの身体に負担の少ない低侵襲治療に取り組んで参りました。小さな傷での手術は、術後の痛みを軽減し、回復を早めることができますが、その反面、術野が狭く、高度な技術が必要です。そこで、より安全に安心して手術を受けられるよう、最新鋭の移動式術中32列へリカルCT「AIRO」 (BRAINLAB)を活用したナビゲーション手術が可能なオペ室を新設しました。
高画質な術中CT画像は、術者に自信をもたらし、高度な技術が必要な低侵襲手術をサポートし、的確な手術に役立ちます。術者のストレス軽減にも貢献できることが期待できます。これからの超高齢社会に対して、低侵襲手術や術後早期からのリハビリテーションを提供し、健康長寿の実現に貢献したいと考えます。
近年、脳神経外科や整形外科の分野では、より低侵襲で、正確な手術を実施するためにナビゲーションシステムが導入されるようになりました。ナビゲーションで重要なのが正確な位置情報です。手術を受ける体位で撮影した画像を活用することで、術前に撮影した画像より精度が向上し、より質の高い手術を行うことができます。
術中CT「AIRO」は手術台に完全対応しており、患者さまを動かさず撮影でき、正確な位置情報を得ることができます。また、径が107 cmと大型のボアサイズで、1回の撮影範囲が径50 ㎝×100 ㎝と大きいため、脊椎全体を観察でき、3D-Cアーム装置よりも骨や筋肉を鮮明に可視化できます。脳神経外科手術や脊椎手術、外傷外科手術での撮影に最適です
脊椎手術においては、骨を削る際にドリル先端の位置情報がナビゲーション画像にリアルタイムで反映され、安全で最適な骨削除を目指す取り組みも始めました。
この取り組みでは、神経損傷、関節損傷を防ぎ、運動機能の温存に寄与することが期待できます。
バルコ社の非圧縮画像伝送ソリューションNexxisが導入され、IPネットワークが構築されました。手術顕微鏡、内視鏡、ナビゲーション、エコー、神経モニタリング、PACS※、無影灯センターカメラ、生体モニタの情報が4K対応の手術室用31インチおよび58インチの天吊り型ディスプレイに選択表示でき、ナビゲーション画像はもちろん、統合された術中情報を近くで確認しながら、手術が可能です。今後、遠隔手術支援にも対応可能なオペ室としての機能を有しています。
※PACS:検査機器からの画像データを保管し、端末に表示するシステムです。
当院では、神経内視鏡による脳出血に対する血腫除去術も積極的に行っている他、愛媛大学脳神経外科教室のご支援により、脊椎疾患については、手術顕微鏡を用いた低侵襲手術を実施しています。
脳血管内カテーテル治療については、超急性期からの血栓回収療法が当地で実施できる体制も構築され、rt-PA静注療法の無効例や非適応例に対して実施しています。また、脳動脈瘤のコイル塞栓術や頚動脈狭窄に対するステント留置術など「切らずに治す」治療も取り入れています。
※印は要予約