「年だから仕方ない」「手術は怖いから」と、しびれや痛み、動きにくさを抱えたまま生活していませんか?背骨(脊椎)のSOSは、四肢や手足に現れます。
一つでも当てはまる方は、背骨の中を通っている神経が圧迫されているサインかもしれません。原因を追求して、患者さんにあった対処方法を考えていきます。
01:腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
脊髄の通っている脊柱管が狭くなり、神経が慢性的に圧迫されている状態をいいます。
腰痛、歩行障害、足のしびれ、筋力低下、排尿・排便障害などがあります。神経の圧迫が強くなり急激に症状が悪化した場合には、痛みの増悪、足の麻痺と感覚障害の進行が出現したりします。典型的な症状には間欠跛行(かんけつはこう)があります。
*間欠跛行(かんけつはこう)
しばらく歩いていると、脊椎に負荷がかかり、神経が圧迫され、足腰に痛みやしびれを感じて歩きにくくなったり、歩けなくなったりします。しばらく休憩したり、前かがみになり休憩することでまた歩けるようになります。
脊柱管狭窄症の治療には、「保存療法」と「手術療法」があります。 保存療法としては、局所麻酔剤などを注射する神経ブロック、鎮痛薬や血行を促進する薬などによる薬物療法、コルセットなどを装着する装具療法などがあり、症状が軽い場合は保存療法で改善することもあります。保存療法を続けても改善しない場合や、症状が悪化して歩行や日常生活に支障を来たす場合には手術を検討します。脊柱管狭窄症の手術は、脊柱管を圧迫している骨や椎間板、靭帯などを切除して脊柱管を広げ、神経の圧迫を取り除く「除圧術」や、脊柱管を広げた後に金属やボルトで背骨を固定する「後方椎体間固定術(PLIF/TLIF)」があります。


02:脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、上下方向からの力が加わって生じる背骨の骨折です。
正常な背骨では高所からの転落など大きな力が加わらなければ生じない骨折ですが、年齢とともに骨がもろくなり、尻もちをつくなどの軽微な衝撃でつぶれる場合や、知らない間に徐々に体の重みを支えきれずに椎体がつぶれてしまうことがあります。閉経後の女性に多く、骨粗しょう症も大きな原因の一つと言われています。
若い人で理由なく腰痛が1カ月以上続く場合は、本人が気付かないうちに骨折を起こしているケースがあります。レントゲンやCTなどの画像撮影により診断しますが、それだけではわからない場合もありMRIによる検査を追加することもあります。
寝返りや起き上がり時に生じる背中の激しい痛みが生じます。背中だけでなく、腰の部分に痛みが走ることがあります。
一般的には鎮痛剤の処方と安静や、コルセットを装着するなどの保存療法を行います。多くは保存療法で改善しますが、痛みが続いたり、骨折部が治らない偽関節という状態となる場合があります。当院では、早期の除痛と偽関節の可能性を減らすために、骨セメントを用いた低侵襲手術による治療法「経皮的椎体形成術(BKP)」を採用しています。偽関節となった骨折に対しても、骨セメントを注入することで疼痛の軽減と骨折部の癒合が期待できます。場合により、スクリューを用いた固定を追加することがあります。
また、脊椎圧迫骨折の背景には、骨粗鬆症があるため骨密度の検査や採血などによる診断や内服・注射などによる治療が必要です。
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03:頚椎/腰椎椎間板ヘルニア
椎間板が変性し、組織の一部がとびだした状態をいいます。腰部、頚部に発症すること多いです。
椎間板ヘルニアの治療には、「保存療法」と「手術療法」があります。保存療法としては、薬物療法や神経ブロック、理学療法などがあります。多くの場合は保存療法で軽快しますが、麻痺が強い場合や保存療法が効かない場合は手術療法となります。
頚椎の手術には、前からヘルニアをとる手術と、後ろから神経の通り道を広げる手術があり、ヘルニアの大きさ、場所などによって手術の方法が決定します。腰椎の手術では、基本的には背中側からヘルニアをとる手術を行い、内視鏡、顕微鏡、拡大鏡を使った手術があります。何度も繰り返す場合やヘルニアの場所によっては、椎間板を全て取って背骨を金属で止める「固定術」が必要になることもあります。
04:頚髄症(頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症)
頸椎の椎間板変性や突出、黄色靱帯肥厚などの加齢による変性や後縦靭帯の骨化により脊髄が圧迫され、四肢のしびれ、痛み、脱力などが生じます。症状が進行すると手指の運動や歩行が困難になり、さらに、排尿や排便が困難になります。
症状がしびれのみであったり、運動障害があっても軽度の場合には頚椎カラー等を装着して頚部を安静に保つ保存加療も行われることがあります。しかし、四肢の感覚、運動障害が進行し、日常生活に支障をきたすようになった場合には手術加療が必要となります。神経の障害がある程度まで進行してしまった場合は、手術を行ってもいたんだ神経の症状(しびれや運動障害)が多く手術の効果が期待しにくいことがあります。著しい筋力低下や、排尿・排便機能障害等がある場合には不可逆的な神経障害となることが多いです。
手術の場合は、頸椎の骨(棘突起)を削って開くことで脊柱管(脊髄の通り道)を広げて脊髄、神経根への圧迫を取り除く「頸椎椎弓形成術(脊柱管拡大術)」を行います。
05:側弯症
背骨が左右に彎曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがあります。通常小児期にみられる脊柱変形を指し、女子に多くみられます。左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起、などの変形を生じます。原因不明の側腕を突破性側弯症、脊柱の先天的な異常よる側弯を先天性側弯症、神経や筋の異常による側弯を症候性側弯症といいます。
側弯が進行すると、腰背部痛や心肺機能の低下をきたすことがあります。
診察では、前かがみの姿勢をとらせて後ろから脊柱を観察します。症候性側弯症の鑑別には神経学的検査やMRI検査が有効です。短時間で側弯が悪化してくる場合もあり、経過観察が必要になります。また、脊柱全体のレントゲンから側弯の程度を角度で表わしますが、脊椎骨や肋骨に異常がないかも同時に検査します。
側弯症は、弯曲が進行する前に診断して治療を開始することが大切です。治療法は側弯の原因や程度、年齢によって異なります。突発性側弯症で程度が軽い場合には、運動療法などで経過観察しますが、進行する場合には進行防止のために装具治療を行います。装着時間が長いほど効果があり、成長が止まり、骨が成熟して側弯の進行もなければ徐々に装着時間を減らし、装着治療を終了します。
脊柱の成長期である思春期に悪化する場合が多いため、進行する場合は手術による矯正が必要になる場合があります。側弯の程度に応じて、脊柱の前方(お腹)から行う「前方矯正固定術」と後方(背中) から行う「後方矯正固定術」にわかれます。脊椎にインプラントと呼ばれるねじ(スクリュー)やフック、ワイヤーを設置し、その後これらを棒(ロッド)で連結し、湾曲した脊柱を矯正します。
愛媛大学大学院医学系研究科 整形外科准教授および脊椎センター長を歴任。 脊椎外科の第一線で数多くの症例に向き合い、専門医としての、一人ひとりに適した治療戦略を追求し続けるスペシャリスト。
正確な診断こそが、治療の要。整形外科医としての経験に基づき、お一人おひとりに最適な『治療戦略』を提案します。
適切な治療を行うには、まず正確な診断に基づいた治療戦略が必要になります。リハビリや投薬といった「保存的加療」で改善が見込めるのか、あるいはその限界を見極め、適切なタイミングで「手術」を選択すべきなのか――正確な判断が、患者さんのその後の人生を大きく左右します。脊椎の手術に不安を抱く方は少なくありませんが、これまでの診療経験に基づき、患者さんの大切な背骨を安心してお任せいただけるよう、誠実で質の高い医療の提供を目指しています。
手術をしたら、ずっと寝たきりになりませんか?当院では、患者さんの容態や回復状況に応じて、適切なタイミングでリハビリテーションを開始しています。医師・リハビリスタッフ・看護師をはじめとした多職種が連携し、ご自宅での生活を見据えた支援に取り組んでいます。
高齢でも手術を受けられますか?はい。高齢の方でも、内科など関連診療科と連携し、全身状態を慎重に確認したうえで、安全性に十分配慮しながら手術を行っています。
入院期間はどれくらいですか?疾患によって異なりますが、圧迫骨折の治療(BKP)なら最短で1週間、一般的な手術でも2〜4週間程度が目安です。
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| 午前 8:30~11:00 |
– | 森野 忠夫 | – | 森野 忠夫 | – | – |