呼吸器内科 部長 塩田 哲広
私は若い先生方を指導するときに好んで使う言葉があります。「真実は常に未来にある。それは誰もわからない。でも今は正しいと思うことを信じて進むしかない。」今後は地域の医療機関の皆さまと連携しながら新しい四国中央市の呼吸器診療を作っていきたいと考えています。よろしくお願いします。
2002年に分子標的治療薬(イレッサ)が初めて上市され、2014年に免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ)上市され肺癌治療は一変しました。進行肺癌が治る時代になってきたのです。そして肺癌の個別化医療が一機にすすみました。その治療選択には組織診断と遺伝子診断が必須です。当科ではCTガイド下生検、局所麻酔下胸腔鏡検査、超音波気管支鏡などを駆使して組織採取を行い、遺伝子解析、免疫染色などを行い速やかに治療を開始できるようにしてまいります。
胸水貯留の原因には感染症であったり腫瘍性であったり原因は様々です。当院では背局的に局所麻酔下胸腔鏡検査を施行して胸水の原因検索を行っていこうと考えています。検査時間が30分程度で外来でも十分施行可能です。
膿胸の患者さんでは速やかに局所麻酔下胸腔鏡で胸腔内の洗浄を行うことで治療期間を大きく短縮できます。また膿胸の原因の半数以上が歯周病感染です。当院ではこの問題に積極的にとり組んでまいります。
パキロピット、ゾコーバなどの3CL プロテアーゼ阻害薬の開発により重症化することは殆どなくなりましたが、現在では後遺症がかなり問題になっています。その原因はウイルスの持続感染だといわれています。その治療法はまだ確立されてはいませんが、抗ウイルス薬やワクチン接種がこの後遺症に有効との報告があります。当科ではこの問題にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
インフルエンザ感染症後には肺炎球菌肺炎が起こりやすいというのをご存知でしょうか?何故そうなのか?機会があればご紹介したいと思います。適切な抗菌薬の選択を行うことで治療期間を短縮しできる限り外来で治療していこうと考えています。
皆さんは気胸といえばドレナージをして肺を再膨張させないといけないと思っておられませんか?肺を風船に例えるとその風船に穴が開いた状態が気腫です。穴の開いた風船を無理やり膨らませるとどうなるでしょうか?そうです。開いた穴も大きくなるのです。当科では胸腔ドレナージからの持続吸引は殆ど行いません。外来用のThoracic egg、Thoracic ventなどのドレナージ装置を用いて基本治療は外来で施行します。
この疾患はICS+LABA+LAMAのトリプル製剤の開発でそのコントロールが大きく改善しました。それでもまだコントロールが不十分な方には抗IL5抗体であるヌーカラ、抗IL5受容体抗体であるファセンラ、抗IL4,IL13受容体抗体であるデュピクセント、抗TSLP抗体であるテゼスパイア、抗IgE抗体であるゾレアなど生物学製剤を積極的に導入していきたいと考えています。
この疾患でもACOの概念が導入されてからICSを用いたトリプル製剤が使用されるようになってきました。しかし肺炎を併発するリスクも高まることからその使用は慎重であるべきだと考えています。急性増悪をいかに予防するかが呼吸器内科医の腕の見せ所です。
この疾患はオフェブ、ピレスパなどの抗線維化薬の開発で治療が大きく変化しました。必要な患者さんがおられましたら、積極的に投与していきたいと考えています。詳細は5月28日の医師会講演会でお話する予定にしています。
2003年に山陽新幹線の運転士の居眠りが原因で岡山駅でオーバーランをしたことから認知されるようになった疾患です。治療はCPAP(もうみんなカタカナでシーパップと言ってますね)があまりにも有名ですが、実はこの治療を継続できる人はそんなに多くありません。手術や口腔内装具、ナステントなどCPAP治療以外にも治療方法があります。ご相談ください。
在宅酸素療法、在宅鼻マスク人工呼吸療法など積極的に施行していきたいと思います。
私が初めてCTガイド下生検を実施したのは2004年2月5日でした。それから現在までに1000例を超える症例を行ってまいりました。検査は基本外来で施行し、肺野末梢病変で8~9㎜の小さな病変でも診断率は73%と高いです。他肺葉を経由して穿刺したり、対側から縦隔を経由して穿刺したり、人工気胸を作成して肺を穿刺することなく縦隔病変の生検を行ったりユニークな方法を多数開発し2019年『あなただけに教えます。CTガイド下肺生検のコツ』を上市しました。
これまでに施行した局所麻酔下胸腔鏡検査の症例数は500を数えます。経験を重ねると色々なことが出来るようになってきます。壁側胸膜を直接露出させて開窓する方法で胸水がなくても胸膜病変が疑われると検査を施行しています。通常の生検鉗子であれば小さい検体しか採取できませんが、縦隔鏡用の鉗子を別に挿入して十分量の組織を採取するようにしています。
シネMRIでは呼吸不全患者の胸壁と横隔膜の動きを左右別々に観察することが可能です。現在胸壁の運動、横隔膜の運動を自動で定量化するソフトの開発を目指しています。