顔面神経は顔面の動きを作る表情筋を支配するとともに、唾液分泌や味覚などを支配する神経でもあります。この神経が障害されることで片側、もしくは両側の顔の動きが悪くなることがあります。
顔面神経麻痺の一部はヘルペスウィルスの再活性化によって起こることが分かっています。中でも麻痺とともにヘルペス疹が耳内や耳周囲、顔面、口腔などにみられるものをハント症候群と言います。その他にも腫瘍によるもの、外傷によるもの、脳血管障害 (脳出血・脳梗塞) によるものなど多くの原因で麻痺は生じることがあります。
顔面神経麻痺になると、顔面の片方が麻痺を起こし、おでこにしわを寄せることが出来なくなる、目を閉じにくくなる(目が乾く)、食べ物や飲み物を摂取した時に口からこぼれるなど、顔の筋肉麻痺に関連した症状が現れます。また、聴覚過敏が生じたり、味覚障害が現れたりすることもあります。
水痘・帯状疱疹ウイルスによる場合は、耳やその周囲に水疱(帯状疱疹)ができ、その部分が非常に痛み、めまい、急性の難聴などをともなう事もあります
視診
麻痺の程度を評価するとともに、鼓膜や外耳道にヘルペス疹がないか確認します。
画像検査
CTやMRIなどの画像検査で腫瘍やその他の原因を検索します。
聴力検査
難聴やめまいの有無を確認します。
筋電図
神経を直接刺激することで、どの程度神経が障害されているかを調べます。麻痺の予後を判断する検査として有用です。
腫瘍が原因の場合は原疾患の治療を行います。ウィルス性や外傷性麻痺の場合は神経の浮腫を防ぐためステロイドホルモンを主体とした治療を行うほか、抗ウィルス薬やビタミン剤の投与も行います。
いずれの場合も麻痺の改善には数カ月を要することが多く、後遺症の予防のために顔面マッサージなどのリハビリを継続していきます。麻痺の改善が乏しい場合には外科的治療を行うこともあります。
麻痺の症状が出てからなるべく早くに治療を行うことが望ましいと言われているため、麻痺が見られた場合は放置せずにすぐに病院を受診することをお勧めします。